仲介事例【熱海市・1円別荘】階段62段、車庫なし、土砂災害特別警戒区域-「お荷物不動産」が社員の夢を育てる宝物へ
| ご相談者: | T.K 様(当社ホームページからのお問い合わせ) 東京都豊島区 |
静岡県熱海市の別荘地にある、長年利用されていない別荘について売却のご相談をいただきました。
かつては家族で過ごすための場所だった別荘も、年齢や生活環境の変化によって利用する機会が減り、次第に足を運ばなくなってしまったそうです。
しかし、使っていなくても、別荘を所有している限り管理費や固定資産税などの負担は続きます。建物も時間の経過とともに老朽化し、修繕しなければならない箇所が増えていきました。
売主様が特に心配されていたのは、金銭的な負担だけではありませんでした。
「この老朽化した別荘、もしかしたら手放せないかもしれない」
そのような不安を抱えながらも、条件の厳しい物件であることはご自身でも理解されており、なかなか売却への一歩を踏み出せずにいたそうです。
一般的な不動産として高値で売却することよりも、まずは将来の管理負担をなくし、負動産を残さないことが、売主様の一番のご希望でした。
そこで、売買価格を1円に設定し、この別荘の課題も魅力も理解したうえで引き継いでくださる方を探すことになりました。
状況

現地を確認すると、一般的な不動産会社では取り扱いをためらう要素がいくつも重なっていました。
まず、敷地内に駐車場がありません。道路から建物の玄関までは、約62段の階段を上らなければなりませんでした。
買主様が日常的に利用する場合、荷物の運搬や建築資材の搬入、将来的な修繕工事にも大きな負担がかかります。高齢になれば、階段の上り下りそのものが難しくなる可能性もあります。
建物には相応の老朽化があり、バルコニーや鉄骨階段などには、そのまま使用するには注意が必要な箇所も見受けられました。室内には残置物もあり、購入後には片付けや修繕、維持管理が必要です。
さらに、敷地全体が土砂災害特別警戒区域、いわゆるレッドゾーンに指定されていました。
土砂災害特別警戒区域とは、急傾斜地の崩壊などが発生した場合に、建物や人命へ大きな被害が及ぶ可能性がある区域です。建て替えや大規模な改修を行う際には、通常の土地よりも建物構造などに厳しい条件が課される可能性があります。
この物件は単純な再建築不可物件ではありませんが、
- 車両を敷地内へ入れられない
- 玄関まで約62段の階段がある
- 建物が老朽化している
- バルコニーなどに危険箇所がある
- 敷地全体が土砂災害特別警戒区域に入っている
- 所有を続ける限り管理費などが発生する
といった複数の問題を抱えていました。
そのため、一般的な住宅を探している方や、住宅ローンを利用して購入したい方には適していません。
販売価格を1円にしても、買主様は1円だけで所有できるわけではありません。登記費用、取得後の税金、管理費、残置物の処分費用、建物の修繕費などが必要です。
「1円不動産だから得をする」という単純な物件ではなく、所有後の責任と費用を理解した方でなければ引き継ぐことが難しい不動産でした。
一方で、高台からの眺望、自然に囲まれた環境、別荘地ならではの非日常感など、この場所にしかない魅力もありました。
問題は、その魅力を誰に届けるかでした。

解決策
当社 株式会社リライトでは、価格の安さだけを前面に出して販売することはしませんでした。
1円という価格だけが独り歩きすると、購入後に必要となる管理費や修繕費、土地の危険性を理解しないまま問い合わせる方が増えてしまうからです。
そこで、建物の老朽化、階段の段数、車庫がないこと、土砂災害特別警戒区域であること、管理費が継続して発生することなど、買主様にとって不利となる情報も最初から開示しました。
それと同時に、
「一般的な住宅としてではなく、DIYを楽しむ場所として使えないか」
「趣味の拠点や秘密基地、会社の福利厚生施設として活用できないか」
という視点から、この物件ならではの可能性を発信しました。
インターネット上の写真や文章だけでは、62段の階段の厳しさも、高台からの眺望も、建物の傷み具合も正確には伝わりません。
そこで、営業担当の廣澤と私(田中)が現地に入り、1日限定の内覧会を開催しました。
当日は千葉県など遠方からお越しいただいた方を含め、5組のお客様にご見学いただきました。
現地では、実際に道路から階段を上っていただき、建物の老朽化した箇所、危険性、修繕が必要となる部分、購入後の管理負担まで説明しました。
販売価格は1円でも、物件の問題まで軽くなるわけではありません。
実際に現地を確認した結果、5組のうち4組は購入を見送りました。
しかし、残る1組の買主様は、ほかの方とは異なる視点でこの別荘を見ていました。
買主様は会社を経営されており、
「会社の福利厚生施設として活用したい」
「スタッフたちと一緒にDIYをしたい」
「元職人のスタッフもいるので、みんなで手を入れていくこと自体が楽しみです」
と話してくださいました。
一般的な買主様にとっては大きな負担となる老朽化も、この買主様にとっては、社員の皆様と一緒に楽しめるDIYの題材でした。
利便性の悪さも、日常から離れて過ごす場所として考えれば、別の魅力になります。
不動産の問題点がなくなったわけではありません。
その問題を理解し、受け入れたうえで、「ここで何をしたいか」を具体的に描ける買主様と出会えたことが、今回の解決につながりました。
その後、物件の状態や管理費などの条件を改めて確認し、売買契約を締結。販売価格1円を実際に授受し、無事にお引渡しを終えることができました。
売主様からは、
「こんなに楽しみにしてくださる方に引き継いでもらえて本当に良かったです」
というお言葉をいただきました。
買主様だけでなく、買主様の会社のスタッフの皆様も、すでにDIYを楽しみにされているとのことでした。
売主様にとって長年の管理負担となっていた別荘は、買主様と社員の皆様が新しい思い出をつくる場所へと生まれ変わることになりました。
担当者からの一言
今回の取引で改めて感じたのは、不動産の価値は価格や利便性だけでは決まらないということです。
玄関まで約62段、車庫なし、建物は老朽化し、敷地は土砂災害特別警戒区域内。
一般的な不動産市場では、どうしても「売りにくい物件」「価値が低い物件」と評価されます。
売主様にとっても、使わないのに管理費や固定資産税がかかり続ける、まさにお荷物不動産、負動産になっていました。
しかし、買主様にとっては違いました。
社員の皆様とDIYをし、福利厚生の場として利用し、これから新しい時間を積み重ねていく宝物でした。
不動産には、相場があるものばかりではありません。
再建築不可、未接道、私道、借地、底地、市街化調整区域、農地、山林、老朽化した空き家、1円不動産などは、一般的な成約事例が少なく、価格だけでは価値を判断できないことがあります。
だからこそ私たちは、相場がないところに相場をつくることが必要だと考えています。
売主様の「手放したい」という思いと、買主様の「ここで何かを始めたい」という思いを結びつける。
それが、株式会社リライトが大切にしている不動産による縁結びです。
人口減少や高齢化が進む日本では、今後、使われなくなった空き家や別荘がさらに増えていきます。利用していない不動産を相続した子ども世代が、管理費や税金、修繕、近隣対応に苦しむケースも増えていくでしょう。
だからこそ、「まだ自分が元気なうちに整理したい」「子どもに負担を残したくない」と考えた段階で、早めに動くことが大切です。
私は、売れない不動産はないと考えています。
ただし、誰にでも売れるわけではありません。
その不動産の問題を隠さず、その問題を受け入れながら活用できる方を探すこと。そのために現地へ行き、調査し、物件の価値を別の角度から見つけることが必要です。
売主様にとってのお荷物不動産が、誰かにとっての宝物になることがあります。
どんな不動産にも可能性はあります。
再建築不可、老朽化した空き家、管理費だけがかかる別荘、土砂災害特別警戒区域内の土地など、他社で断られた不動産についても、同じようなお悩みをお持ちの方はお気軽にご相談ください。




