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レッドゾーン外でも崖崩れ被害に。熱海の所有物件で学んだ不動産選びと災害への備え

 みなさん、こんにちは。
再建築不可物件コンサルタントの田中です。

 今回は、災害への備えについて。

1 一本の電話で、私が災害の当事者になった

昨日、会社に着いた私に、熱海で民泊をしている所有物件のご近所さんから電話がありました。

「お宅の裏の崖が崩れて、建物が傾いているよ」

一瞬、言葉を失いました。私は予定が詰まっていてすぐに動けず、スタッフの廣澤に現地へ向かってもらいました。

その後、送られてきた写真には、外壁を大きく走る亀裂が写っていました。

「も~、最悪……」

正直、それが最初の気持ちでした。

私は物件を取得してすぐに、裏の崖を適切に管理してほしいと内容証明郵便を送っていました。火災保険にも加入していました。危険をまったく意識していなかったわけではありません。

それでも、自分の所有物件でここまでの被害が起きることを、どこまで具体的に想像できていたのか。改めて考えさせられました。

この物件は、私が把握している限りでは土砂災害警戒区域でしたが、土砂災害特別警戒区域ではありませんでした。

レッドゾーンではなくても、現実に大きな被害が起きる。

今回は、まだ解決途中にあるこの経験をもとに、不動産を選ぶときの確認事項、災害への備え、被災後の対応についてお伝えします。今回の崩落原因や建物の安全性、費用負担については、今後の調査・確認が必要です。

2 災害は増えているのか。大雨の変化と土砂災害の推移

最近、大雨や土砂災害のニュースが目につくと感じる方も多いと思います。ただし、すべての災害が毎年増えている、とまとめるのは正確ではありません。

文部科学省・気象庁の「日本の気候変動2025」では、1976年から1985年と、2015年から2024年を比較すると、全国のアメダスで観測された1時間50ミリ以上の雨の年間発生回数は、約226回から約334回へ、約1.5倍になっています。観測地点数の違いを調整し、1,300地点当たりに換算した数字です。

温暖化で気温が上がると、大気はより多くの水蒸気を含めるようになります。こうした変化などが、大雨の頻度や強さの増加に関わっています。

出典:文部科学省・気象庁「日本の気候変動2025」第5章

一方、国土交通省の公表では、全国の土砂災害発生件数は2024年が1,433件、2025年が578件でした。2025年の数字は2026年3月31日の公表値です。2025年は梅雨期の少雨傾向などが影響し、過去平均を下回っています。

出典:国土交通省「令和6年の土砂災害」、「令和7年の土砂災害発生件数」

土砂災害には、雨だけでなく地震などによるものも含まれます。大雨の回数と土砂災害の件数は、同じ指標ではありません。

また、同じ雨でも、地形や地質、地盤に含まれる水、排水や斜面の状態によって危険性は異なります。

全国の件数が少ない年であっても、目の前の土地が安全とは限らない。その視点が、不動産を所有するうえでは大切だと思います。今回の熱海の崩落も、一般的な気候の変化だけで原因を決めつけることはできません。

3 被災リスクを減らす不動産の選び方

絶対に被災しない不動産を選ぶことはできません。それでも、購入前に確認できることはあります。

まず、ハザードマップや自治体の区域指定を確認します。土砂災害だけでなく、洪水、津波など、その場所に関係する危険を調べます。

土砂災害警戒区域は、土砂災害への警戒・避難体制の整備などを行う区域です。特別警戒区域では、さらに一定の開発行為や建築物の構造などに規制がかかります。

ここで注意したいのは、特別警戒区域に入っていないことが、安全の保証にはならないという点です。

参考:国土交通省「土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等について」

次に、現地では建物の中だけでなく、周囲の土地を見ます。

建物の裏に崖がないか。上側の土地から水が流れ込まないか。擁壁にひび割れや膨らみがないか。大木が建物に近接していないか。

今回も、建物の外側にある崖が大きな問題になりました。室内のきれいさや眺望の良さだけでは、不動産の安全性はわかりません。

ただし、見た目だけで斜面や擁壁の安全性を判断することもできません。不安があれば、購入前に建築士や地盤・擁壁に詳しい専門家へ相談することが必要です。

過去の被害や補修履歴について、売主に確認し、行政資料や近隣への聞き取りも組み合わせます。崖や擁壁が誰の所有なのか、境界や管理関係を特定しておくことも重要です。

自分の建物を守るための工事でも、隣地に立ち入る必要があれば調整が伴います。私道が狭く、工事車両が入れなければ、復旧方法や費用にも影響します。

安く買えるかだけでなく、管理できるか、危険が見つかったときに対応できるか。そこまで考えて選びたいものです。

4 万が一の被災に備える。保険、記録、近隣とのつながり

今回、火災保険に加入していたことは、私にとって一つの支えになりました。

ただし、加入していればどんな被害でも全額補償されるわけではありません。事故原因、補償範囲、免責金額、支払条件などによって扱いが変わります。今回の被害についても、補償が確定したという意味ではありません。

火災保険という名称でも、風災や水災などを補償する商品があります。一方、地震・噴火・津波による損害は、通常の火災保険では補償されません。契約内容と建物の用途に合う補償を、保険会社や代理店に確認しておきましょう。

参考:日本損害保険協会「風水雪災等による損害を補償する損害保険」

平常時の記録も大切です。建物の外壁、基礎、擁壁、崖の様子や、過去の修繕内容を残しておくと、後から状態の変化を確認する材料になります。

私が送っていた内容証明も、管理の申し入れをした経緯を示す記録です。ただ、それだけで相手方の賠償責任が決まるものではありません。通知したことと、危険そのものが解消されたことは別です。

遠方の空き家や別荘であれば、異変を知らせてもらえる連絡体制も考えておきたいところです。今回、電話をくださったご近所の方の存在は、本当にありがたく感じました。

避難先や緊急連絡先を決めることも含め、書類上の備えと、人が動ける備えの両方が必要だと思います。

5 被災してしまったときは、何から対応するか

最初に優先するのは、人の安全です。

建物に大きな亀裂がある、傾いている、崖が崩れている。このような状況では、写真や荷物のために無理に立ち入らないでください。被害確認や片づけよりも、二次災害を防ぐことが先です。

緊急性に応じて消防や警察へ連絡し、自治体の防災・建築・砂防関係の窓口にも相談します。利用者がいる場合には、安全な場所への避難を優先します。

保険会社や代理店には早めに事故を伝え、必要な記録や手続きを確認します。

安全が確保できる範囲で、被害箇所の写真、建物全体の写真、発見日時、連絡の経緯などを残します。国の案内でも、住まいが被害を受けた際は、片づけや修理の前に写真で記録することが勧められています。

参考:政府広報オンライン「住まいが被害を受けたとき 最初にすること」

ただし、記録のために危険な場所へ戻ったり、必要な避難や緊急対応を遅らせたりしてはいけません。

そのうえで、建築士や地盤・斜面の専門家に、建物と周囲の安全性を確認してもらいます。応急措置と本格的な復旧工事は分けて考え、工事内容や費用の見通しを整理します。

自治体には、罹災証明書や被災証明書、利用できる支援制度についても相談します。住居、空き家、事業用建物などの用途や自治体によって扱いが異なるため、対象となるかを確認することが必要です。

また、隣地から土砂や木が来たとしても、原因調査の前に費用負担を決めつけることはできません。所有・管理関係や事故原因を確認し、争いが生じる場合には弁護士などへ相談することになります。

6 被災した不動産をどうするか。修繕、建替え、売却の判断

安全を確保した後には、今後その不動産をどうするかという問題が残ります。

修繕して使い続けるのか。建替えを検討するのか。売却や処分を考えるのか。

この判断では、建物だけ直せばよいとは限りません。崖の安全対策や擁壁の補修、排水の改善などが必要であれば、その費用や実施できる条件も含めて考えなければなりません。

再建築不可物件では、特に解体を決める前の確認が重要です。

建物を壊した後、同じように建て直せるとは限りません。建替えの可否だけでなく、どの範囲まで修繕できるか、建築確認などの手続きが必要かを、建築士と行政に確認する必要があります。

なお、これは再建築不可物件に関する一般的な注意点であり、今回の熱海物件の建替え可否を断定するものではありません。

市街化調整区域の分家住宅なども、建築や利用に関する条件を確認する必要があります。接道や私道の問題に加え、敷地に山林や農地が含まれる場合は、工事や土地利用に関する別の確認が必要になることもあります。

売却を検討する場合は、被害の内容、調査結果、修繕履歴、未解決の危険や費用負担を整理し、買主が判断できるように伝えることが大切です。

買う側が知りたいのは、いくら安いかだけではありません。安全に使えるのか、対策にいくらかかるのか、その工事を実施できるのか。そこが見えなければ、購入の判断は難しくなります。

当社が扱う売却の難しい不動産でも、問題を一つずつ明らかにし、引き受ける側の不安を減らすことが大切です。ただし、どの被災物件にも必ず買い手が見つかる、というお約束はできません。安全性と費用、需要を踏まえ、現実的な選択肢を探していくことになります。

7 災害を遠い話にしない。今できる備えを一つずつ

「まさか、自分が災害の被害に遭うなんて」

今回、私自身がそう感じました。

全国の難しい不動産を見てきた経験があっても、所有者として写真を見たときには、やはり動揺しました。危険を知識として理解することと、実際に被害を受けることには、大きな違いがありました。

内容証明を送り、保険にも入っていました。それでも被害は起きました。備えがあれば災害をすべて防げる、ということではありません。

だからこそ、購入前の調査、所有中の管理、保険や記録、避難の準備を重ねていくことが大切なのだと思います。

皆さんが住んでいる家、ご実家、遠方の空き家。その建物の裏側や上側に、どのような土地があるかをご存じでしょうか。

今回の件は、まだ対応の途中です。安全を確認し、被害と原因を整理し、今後どうするかを一つずつ考えていきます。

気持ちは重いですが、ここで得た経験を、お客様への説明や不動産の調査に生かしたい。被害を受けた所有者の不安にも、今まで以上に具体的に向き合っていきたいと思っています。

崖や擁壁に不安のある土地、管理が難しい空き家、被災後の不動産の売却・買取・処分について、同じようなお悩みをお持ちの方はお気軽にご相談ください。