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【残置物は勝手に捨てられない】不動産売買・賃貸で起きるゴミ問題と7つの予防策

 みなさん、こんにちは。

再建築不可物件コンサルタントの田中です。



 今回は、不動産における残置物問題について。



不動産売買 残置物



 不動産の売却や賃貸では、建物の中に残された家具、家電、衣類などの「残置物」が大きな問題になることがあります。



 残置物とは、売主や入居者が建物内に置いたままにした物のことです。

机やタンスだけなら簡単に片づけられそうですが、実際の現場はそれほど単純ではありません。

古い医療機器、薬品、変圧器、受水槽、冷蔵庫、消火器、大量の生活用品……。



さらに、賃貸住宅で入居者が亡くなり、相続人全員が相続放棄をしてしまった場合には、大家さんであっても残された物を自由に捨てられないことがあります。



 残置物は、ただのゴミではありません。

処分方法を間違えると、高額な撤去費用だけでなく、不法投棄や相続をめぐる不動産トラブルに発展する可能性があります。



今回は、全国の再建築不可物件、空き家、借地、農地、山林などを扱ってきた実務経験をもとに、不動産売買・賃貸で起きる残置物問題と、その予防策をご解説します。

 



残置物とは何か?



残置物とは、売買や賃貸が終わったあとも建物や土地に残されている物です。

例えば、次のような物があります。




  • 家具、布団、衣類

  • 冷蔵庫、テレビ、洗濯機

  • 食器や調理器具

  • 仏壇、位牌、アルバム

  • 書類、通帳、印鑑

  • 農機具、工具、タイヤ

  • 薬品、注射器、医療機器

  • 消火器、ガスボンベ

  • 変圧器やコンデンサー

  • 地下タンク、受水槽、高置水槽

  • 建築廃材や事業用設備



一見すると不要品でも、所有者にとっては財産かもしれません。

特に通帳、印鑑、権利証、貴金属、写真、仏壇などを、確認せずに処分するのは危険です。



賃借人が亡くなった場合、残された物は原則として相続財産になります。

大家さんが「部屋を貸しているのは自分だから」と勝手に捨てると、あとから相続人とのトラブルになる可能性があります。

 



不動産売買で起きる残置物問題



1.売主が片づける約束だったのに残っている



通常の不動産売買では、売主が引渡しまでに残置物を撤去する条件にすることがあります。

ところが、引渡し直前になって、



「思ったより荷物が多かった」



「処分業者の費用が高くて頼めなかった」



「遠方なので片づけに行けない」



という問題が起きます。

売買契約書に撤去期限や費用負担が明記されていなければ、売主と買主のどちらが処分するのかで揉めることがあります。



2.残置物込みで買ったら危険物が見つかった



空き家や事業用不動産では、残置物をそのままにして売却することもあります。

しかし、室内や倉庫にある物を確認しないまま「残置物は買主が処分する」と契約するのは危険です。

例えば、古い工場、医院、作業所、クリーニング店などには、通常の家庭ゴミとは違う物が残されている可能性があります。

医療機器についても、すべてが同じ方法で処分できるわけではありません。感染性廃棄物、薬品、放射性物質、水銀を含む製品などがあれば、それぞれ専門的な確認が必要です。



つまり、




医療機器がある=すべて危険物




ではありませんが、




医療機器だから普通の不用品回収業者に任せればよい




とも限りません。

機器の名称、製造番号、内容物、使用履歴を確認し、必要に応じて医療機関、メーカー、行政、専門の処理業者へ相談する必要があります。



3.古い変圧器やコンデンサーにPCBが含まれている



古い建物に残された変圧器、コンデンサー、安定器などには、PCBが含まれている可能性があります。

PCBは人体や環境に悪影響を及ぼすおそれがある物質で、通常のゴミとして処分できません。

PCB廃棄物を保管する事業者には、適切な保管、行政への届出、決められた方法による処分などが求められます。

低濃度PCB廃棄物の処分期間は、原則として2027年3月31日までとされています。



「古そうだから、とりあえず処分業者に持っていってもらおう」



では済まされません。

まずは銘板、製造年、メーカー、型式を確認し、PCB含有の可能性を調査することが必要です。



4.受水槽は“ゴミ”ではなく建物設備かもしれない



受水槽や高置水槽は、単なる残置物ではなく、建物の給水設備として扱われていることがあります。

売買後も使用するのか、使用を廃止するのか、所有者は誰なのか、共用設備ではないかを確認しなければなりません。

使わない場合でも、タンクだけを撤去すれば終わりとは限りません。




  • 給水管の切り替え

  • 水抜き

  • 配管の処理

  • 電気設備やポンプの撤去

  • 基礎部分の撤去

  • 水道事業者等への確認

  • 自治体が定める届出



などが必要になることがあります。

区分マンションでは共用部分に該当する可能性もあるため、所有者の判断だけで撤去してはいけません。

 



残置物処分を業者に頼めば安心なのか?



答えは「業者選びと依頼方法による」です。

インターネットには「格安回収」「何でも無料」「即日撤去」と宣伝する業者が多数あります。

しかし、家庭から出る廃棄物を収集運搬するには、原則として市町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が必要です。

産業廃棄物についても、その種類に対応した許可が必要です。

古物商許可や産業廃棄物収集運搬業の許可があるからといって、家庭から出た生活ゴミを何でも回収できるわけではありません。

ここは不動産実務でも誤解されやすいポイントです。

 



マニフェストはすべての残置物に必要なのか?



マニフェストとは、産業廃棄物がいつ、誰によって運ばれ、どこで処分されたのかを確認するための管理票です。

ただし、家庭から出た一般廃棄物を含め、すべての残置物に産業廃棄物マニフェストが必要なわけではありません。

必要なのは、主に事業活動に伴って発生した産業廃棄物を処理業者に委託する場合です。

そのため、残置物を処分するときには、まず次の分類が必要です。




  • 売却できる物

  • 所有者へ返す物

  • 家庭系一般廃棄物

  • 事業系一般廃棄物

  • 産業廃棄物

  • 特別管理産業廃棄物

  • 家電リサイクル法など個別制度の対象物

  • PCB、感染性廃棄物など専門対応が必要な物



産業廃棄物の処理を委託する場合は、書面による委託契約を締結し、許可内容を確認したうえでマニフェストを交付・保存します。

PCB廃棄物については、委託契約やマニフェストの保存など、さらに厳格な手続が必要です。

 



業者が不法投棄したら、依頼者は関係ない?



「処分業者にお金を払ったのだから、その後は知らない」



とは言い切れません。

事業活動で発生した産業廃棄物については、処理を業者へ委託しても、排出事業者の責任がなくなるわけではありません。

例えば、次のような依頼方法には注意が必要です。




  • 必要な許可を持っていない業者へ依頼した

  • 許可証の品目や期限を確認していない

  • 書面による委託契約を締結していない

  • 相場より極端に安い金額で依頼した

  • 処分先を確認していない

  • マニフェストを交付していない

  • 処理完了の確認をしていない



不適正な処理業者へ委託した場合、状況によっては排出事業者が措置命令の対象となり、不法投棄された廃棄物の撤去などを求められる可能性があります。

安い業者に頼んだつもりが、後日、山林などに不法投棄され、結果的に高額な撤去費用を負担する――。

それでは「安く処分した」どころか、完全に高くついてしまいます。

 



賃貸住宅で入居者が荷物を残して退去した場合



入居者が生きていて連絡も取れる場合は、残置物の撤去を求め、原状回復費用や処分費用を精算します。

しかし、敷金だけで足りないこともあります。

例えば、敷金が5万円でも、ゴミ屋敷状態の部屋では撤去費用が50万円、100万円を超えることがあります。室内の消臭、害虫駆除、特殊清掃、床や壁の交換まで必要になれば、大家さんの負担はさらに増えます。

だからこそ、賃貸経営では家賃だけでなく、




  • 退去時の残置物リスク

  • 孤独死のリスク

  • 原状回復費用

  • 連帯保証人の支払能力

  • 保証会社の補償範囲



まで考える必要があります。

家賃が入っている間は順調に見えても、最後の退去で数年分の利益が消えることもあるのです。

 



入居者が亡くなり、相続人全員が相続放棄した場合



このケースは特に大変です。

入居者が亡くなると、その人の家具や家電などは相続財産になります。

相続人がいる場合は、その相続人と賃貸借契約の終了や残置物の処分について協議します。



ところが、相続人全員が相続放棄をすると、大家さんが直接交渉できる相手がいなくなることがあります。

それでも、大家さんが勝手に鍵を開け、室内の物を処分してよいわけではありません。

状況によっては、家庭裁判所へ相続財産清算人の選任を申し立て、清算人との間で契約終了や残置物処分を進める必要があります。



この手続には時間も費用もかかります。

相続財産が少ない場合、申立人が予納金を納めなければならないこともあります。

大家さんからすれば、



「家賃は入らない。部屋も貸せない。それでも荷物は捨てられない」



という状態です。

まさに、タチが悪い残置物問題です。

 



残置物問題を防ぐ7つの方法



1.売買契約書に残置物の扱いを具体的に書く



単に「残置物は買主が処分する」と書くだけでは不十分な場合があります。

少なくとも、次の事項を確認します。




  • 何を残し、何を撤去するのか

  • 撤去期限

  • 処分費用の負担者

  • 残す物の所有権をどうするのか

  • 危険物や専門処理品が見つかった場合の対応

  • 引渡し後に地中埋設物が見つかった場合の負担

  • 売主が所有していない物が混在していないか



写真付きの残置物一覧を作成すると、認識の違いを減らせます。



2.契約前に建物の中を確認する



空き家や再建築不可物件を「古家付き土地」として売買する場合でも、建物内の確認は必要です。

特に、元医院、工場、作業所、ガソリンスタンド、クリーニング店、農業施設などは、一般住宅とは違う物が残されている可能性があります。

建物の用途履歴も確認しましょう。



3.撤去業者の許可内容を確認する



見積金額だけで決めてはいけません。




  • 誰が収集運搬するのか

  • どこへ持っていくのか

  • 必要な許可を持っているか

  • 許可の期限が切れていないか

  • 対象品目が許可範囲に含まれているか

  • 再委託が行われるのか



を確認します。

家庭系一般廃棄物については、物件所在地の市区町村へ処分方法を確認することが基本です。



4.産業廃棄物は書面契約とマニフェストで管理する



事業活動に伴う産業廃棄物を委託するときは、収集運搬業者、処分業者それぞれの許可を確認し、書面で契約します。

マニフェストを交付しただけで終わりではありません。

返送状況を確認し、最終処分まで適切に行われたかを確認・記録することが大切です。



5.賃貸借契約時に緊急連絡先と相続関係を確認する



高齢者や単身者に貸すこと自体が悪いわけではありません。

むしろ、安心して住める住宅を提供することには大きな社会的意義があります。

ただし、次の対策は必要です。




  • 緊急連絡先を定期的に更新する

  • 連帯保証人または家賃債務保証会社を利用する

  • 残置物撤去費用が補償される保険を確認する

  • 定期的な安否確認サービスを利用する

  • 入居者本人の希望を家族等と共有しておく

  • 国土交通省の残置物処理に関するモデル契約条項を検討する



6.死亡後の契約解除・残置物処理を事前に決める



国土交通省と法務省は、単身高齢者などが亡くなった場合に備え、賃貸借契約の解除や残置物処理を第三者へ委任するためのモデル契約条項を公表しています。

ただし、契約を形式的に結べば何でも捨てられるわけではありません。

残す物、廃棄する物、指定された送付先、一定期間保管する物などを区別し、制度の趣旨に沿って運用する必要があります。



7.問題が起きてからではなく、元気なうちに整理する



相続放棄後に残置物を処分するのは大変です。

そのため、所有者や入居者が元気なうちに、




  • 必要な物と不要な物を分ける

  • 財産目録を作る

  • 家族と処分方法を話し合う

  • 空き家になる前に売却を検討する

  • 専門家へ相談する



ことが最も有効な予防策です。

 



残置物は「最後の片づけ」ではなく「最初に確認する問題」



不動産会社の中には、売買価格や家賃だけを見て判断する会社もあります。

しかし、全国の売れない不動産を見てきた立場からすると、残置物は最後に考える問題ではありません。



誰の所有物なのか。



一般廃棄物なのか、産業廃棄物なのか。



危険物やPCBはないか。



撤去費用はいくらか。



相続人と連絡が取れるのか。



これらを最初に確認しなければ、売却価格や買取価格、賃貸経営の収益性、そして最終的な出口戦略も正しく判断できません。

残置物の山を見ると、誰でも「全部ゴミだ」と思いたくなります。

でも、その中には故人の思い出や相続財産、適切な管理が必要な物もあります。

だからこそ、勢いで捨てるのではなく、一つずつ権利関係と処分方法を整理する。

遠回りに見えても、それが不動産トラブルを防ぐ一番の近道です。



再建築不可物件、空き家、借地権付建物、私道の奥にある土地、市街化調整区域の建物などは、ただでさえ売却や買取が難しい不動産です。

そこに大量の残置物が加わっても、最初から処分を諦める必要はありません。

物件の問題と残置物の問題を分けて整理し、適切な専門業者と連携すれば、解決できる可能性はあります。



「いらない不動産だから、残置物ごと手放したい」



「相続した空き家がゴミ屋敷になっている」



「借主が亡くなり、相続人全員が相続放棄した」



このような場合は、自己判断で処分する前に、弁護士、行政、廃棄物処理業者、不動産会社などへ相談してください。

難しい物件ほど、順番を間違えないことが重要です。

問題を正確に知ることが、解決への第一歩になります。



※廃棄物の区分や必要な許可、処分方法は、物の種類、排出経緯、地域によって異なります。実際の処分時には物件所在地の自治体や専門家へ確認してください。