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【老朽化建物の売買】契約不適合責任とは?免責特約が無効になるケースと揉めやすい不具合トップ3
みなさん、こんばんは。
再建築不可物件コンサルタントの田中です。
今回は老朽化建物売買の際の注意点について。
「築年数が古い建物だから、契約不適合責任はすべて免責にして売却すれば大丈夫」
このように考えている方は少なくありません。
しかし、契約書に「売主は契約不適合責任を負わない」と書けば、どのような問題も免責されるわけではありません。
特に、再建築不可物件、長期間放置された空き家、雨漏りしている古家、相続した実家などは、売却後に不具合が見つかりやすい不動産です。
売主は、
「築50年の古家なのだから、壊れていて当然でしょう」
と思うかもしれません。
一方、買主は、
「古いとは聞いていたけれど、雨漏りやシロアリ被害までは聞いていない」
と考えるかもしれません。
この認識の違いが、契約不適合責任をめぐるトラブルの入口になります。
今回は、全国の老朽化した空き家や再建築不可物件を取り扱ってきた経験をもとに、次の点を解説します。
- 不動産売買における契約不適合とは何か
- 契約不適合責任免責とは何か
- 免責特約が無効になる場合
- 老朽化建物で揉めやすい不具合トップ3
- 修理・対応にかかる費用
- 売主と買主が揉めないための対策
そもそも「契約不適合」とは?
契約不適合とは、簡単にいえば、
契約で約束した不動産の状態と、実際に引き渡された不動産の状態が違うこと
です。
例えば、売買契約書や告知書に「雨漏りはありません」と記載されていたのに、引渡し後の雨で天井から水が漏れてきたとします。
これは、契約で説明された建物と、実際に引き渡された建物の状態が違います。そのため、契約不適合にあたる可能性があります。
2020年4月に改正民法が施行されるまでは、「瑕疵担保責任」という言葉が使われていました。現在は、「契約の内容に適合しているか」という考え方を中心とした契約不適合責任に変わっています。
国土交通省も、契約不適合を「種類または品質について契約内容に適合しない状態」と説明しています。
古い建物に不具合があれば、すべて契約不適合になる?
ここは、とても重要なポイントです。
古い建物に不具合が見つかったからといって、必ず売主が責任を負うわけではありません。
判断の基準は、単純に「壊れていたか」ではなく、
その不具合が契約内容と食い違っていたか
です。
例えば、売買契約書に次のような内容が明記されていたとします。
- 建物は築50年以上経過している
- 長期間空き家になっている
- 雨漏りや腐朽がある
- 給排水設備は使用できるか確認していない
- 建物を利用するには大規模な修繕が必要になる
- 買主は建物を解体する目的で購入する
この内容を買主が理解したうえで購入したのであれば、告知された雨漏りや老朽化について、後から「説明と違う」と主張するのは難しくなります。
反対に、「古家あり」としか説明せず、売主が知っていた重大な雨漏りやシロアリ被害を伝えなかった場合には、契約不適合責任を問われる可能性があります。
つまり、「古い建物だから仕方がない」だけでは足りません。
どこが古く、何が壊れていて、どのようなリスクがあるのかを契約書や告知書に具体的に残す必要があります。
契約不適合があった場合、買主は何を請求できる?
契約不適合が認められると、買主は状況に応じて、主に次の対応を求めることができます。
1.修理を求める
雨漏りの修理や、壊れた配管の交換などを売主に求める方法です。法律上は「追完請求」といいます。
2.売買代金の減額を求める
売主が修理しない場合などに、不具合に相当する金額を売買代金から減らすよう求める方法です。
3.損害賠償を求める
不具合によって買主に損害が発生した場合、その損害の賠償を求められることがあります。
例えば、雨漏りの修理期間中に別の住居を借りた場合、その費用が争点になることもあります。
4.契約を解除する
建物を購入した目的を達成できないほど重大な問題があり、修理などでも解決できない場合には、契約解除を求められる可能性があります。
ただし、小さな不具合が一つ見つかっただけで、直ちに契約を解除できるわけではありません。
契約不適合責任免責とは?
「契約不適合責任免責」とは、売却後に一定の不具合が見つかっても、売主は原則として修理や損害賠償などの責任を負わない、という取り決めです。
個人が売主となる老朽化建物や空き家の売買では、契約書に次のような特約を設けることがあります。
売主は、本物件の土地および建物について契約不適合責任を負わないものとします。
売主にとっては、売却後の予想外の請求を防ぐための重要な特約です。
一方、買主は、引渡し後に不具合が見つかっても、自分の費用で修理しなければならない可能性があります。
そのため、免責特約を設ける場合には、買主が建物の状態やリスクを十分に理解していることが前提です。
「現況有姿」と「契約不適合責任免責」は同じではない
実務では、「現況有姿」という言葉もよく使われます。
現況有姿とは、基本的には、
今ある状態のままで引き渡す
という意味です。
例えば、売主が引渡しまでに古い設備を交換したり、庭木を伐採したり、建物をリフォームしたりしないことを表します。
しかし、「現況有姿」と書いてあるだけで、当然にすべての契約不適合責任が免除されるとは限りません。
- 現況有姿で引き渡す
- 売主が契約不適合責任を負うか
- どの不具合を免責対象とするか
これらは分けて考え、契約書に明確に記載する必要があります。
「現況有姿と書いたから何でも大丈夫」という考え方は危険です。
契約不適合責任免責の特約が無効になるケース
免責特約があっても、売主が責任を免れられない場合があります。
1.売主が不具合を知っていて告げなかった場合
最も注意が必要なのが、このケースです。
例えば、売主が以前から雨漏りを知っていたにもかかわらず、
- 雨漏りはないと説明した
- 告知書に「発見していない」と記載した
- 雨染みを壁紙で隠した
- 過去の修理履歴を伝えなかった
という場合です。
民法上、売主が知りながら買主に告げなかった事実については、免責特約を理由に責任を逃れることはできません。
悪質なケースでは、契約不適合責任だけでなく、詐欺や説明義務違反が問題になる可能性もあります。
2.宅建業者が売主、一般の個人が買主の場合
不動産会社が所有する物件を一般の方へ売却する場合、宅地建物取引業法による買主保護が適用されます。
この場合、不動産会社は原則として、
契約不適合責任を一切負わない
という特約を設けることができません。
宅建業者が売主で、買主が宅建業者ではない場合には、責任期間を「引渡しから2年以上」とする特約を除き、民法より買主に不利な特約は無効になります。
そのため、不動産会社が買取再販した老朽化建物に「契約不適合責任は完全免責」と記載しても、その特約が有効になるとは限りません。
3.事業者と消費者の契約で、消費者に一方的に不利な場合
売主が事業者、買主が一般消費者となる契約では、消費者契約法が適用される可能性があります。
事業者側の損害賠償責任をすべて免除するような条項や、事業者の故意・重大な過失による責任まで免除する条項は、無効になることがあります。
宅建業法だけでなく、消費者契約法の確認も必要です。
4.売主や仲介会社が事実と異なる説明をした場合
契約書に免責特約があっても、
- 「建物は問題なく使えます」
- 「雨漏りは一度もありません」
- 「水道や下水も正常に使えます」
- 「リフォームすれば確実に住めます」
などと説明し、その内容が事実と違っていた場合には、免責特約との関係が問題になります。
特に再建築不可物件では、建物を解体すると新しい建物を建てられない可能性があります。
それにもかかわらず、「古くなったら普通に建替えできます」と説明して売却すれば、建物の不具合とは別に、重要事項説明や契約内容をめぐる重大なトラブルになりかねません。
老朽化建物で揉めやすい不具合トップ3
私が老朽化建物の売買実務で特に注意しているのは、次の3つです。
なお、これは公的な件数統計による順位ではなく、当社が扱う空き家や再建築不可物件の現場で、特にトラブルになりやすい項目として整理したものです。
第1位 雨漏り・屋根や外壁からの浸水
雨漏りは、老朽化建物でもっとも揉めやすい問題の一つです。
契約前の内覧日が晴れていれば、雨漏りに気づかないことがあります。引渡し後、大雨や台風が来て初めて天井から水が落ちてくることもあります。
そのとき売主は、
「自分が住んでいたときには漏れていなかった」
と主張します。
買主は、
「この大きな雨染みを本当に知らなかったのですか」
と疑います。
雨漏りそのものだけでなく、「いつから漏れていたのか」「売主は知っていたのか」という点で対立します。
雨漏りの修理費用
- コーキングなどの部分補修:5万~20万円
- 瓦・板金・防水層の部分補修:20万~80万円
- 屋根の葺き替え・カバー工法:100万~250万円
- 外壁・バルコニー防水を含む工事:150万~300万円超
- 濡れた柱・断熱材・天井の交換:別途30万~200万円程度
雨漏りは、原因を見つけること自体が難しい場合があります。
屋根を直したのに再び漏れ、次は外壁、その次はサッシ周辺……。修理業者泣かせ、不動産会社泣かせ、そして何より売主・買主泣かせの問題です。
第2位 シロアリ・腐朽・柱や土台の損傷
長期間放置された空き家では、床下の状態を売主も把握していないことがあります。
買主がリフォームのために床を剥がしたところ、
- 土台がシロアリに食べられていた
- 柱の根元が腐っていた
- 床を支える木材が折れていた
- 基礎と土台が十分に固定されていなかった
というケースがあります。
特に雨漏りや配管漏水がある建物は、木材が湿った状態になり、シロアリや腐朽の被害が広がっている可能性があります。
シロアリ・構造部の対応費用
- シロアリ調査:無料~5万円程度
- 駆除・防蟻処理:10万~30万円
- 床下の防湿・換気対策:20万~80万円
- 床・土台の部分補修:50万~200万円
- 柱・土台・基礎の大規模補強:200万~500万円超
シロアリを駆除するだけなら数十万円で済む場合があります。
しかし、食べられた柱や土台は薬をまいても元には戻りません。建物の構造部分まで交換することになれば、費用は大きく膨らみます。
第3位 給排水管の漏水・詰まり・排水不良
老朽化した建物では、見た目よりも配管の方が深刻な場合があります。
引渡し後に水を使ったところ、
- 床下から水が漏れた
- 赤水が出た
- トイレが流れない
- 排水すると庭に水があふれる
- 地中の水道管が破損していた
- 隣地の配管と共用になっていた
ということがあります。
地方の古い建物や昔の長屋では、配管が隣地を通過していたり、複数の建物で一本の管を共用していたりすることもあります。
再建築不可物件では、配管工事のための重機が入れず、人力で施工しなければならないこともあります。その場合、一般的な住宅より工事費が高くなる可能性があります。
給排水管の対応費用
- パッキン・接続部分の修理:3万~10万円
- 床下・壁内部の部分修理:10万~50万円
- 漏水調査:1万~5万円程度
- 給水管・給湯管の引き直し:30万~100万円
- 排水管・地中配管の更新:50万~200万円超
- 床・壁・舗装の復旧:別途20万~100万円程度
配管の修理費だけでなく、床や壁を壊して元に戻す費用まで考えなければなりません。
修理費の見積もりを取れば解決するとは限らない
契約不適合のトラブルでは、買主から提出された見積書を売主がそのまま全額負担するとは限りません。
例えば、雨漏りの修理で済むはずなのに、買主が屋根全体のグレードアップ工事を求めた場合、その全額が売主負担になるとは限りません。
反対に、表面だけ補修しても直らない場合は、原因を取り除くための大規模工事が必要になります。
確認すべき点は次のとおりです。
- 不具合の原因は何か
- 引渡し前から存在していたのか
- 契約書や告知書に記載されていたか
- 修理に必要な工事範囲はどこまでか
- 経年劣化部分と契約不適合部分を分けられるか
- 買主が希望するリフォーム費用まで含まれていないか
当事者だけで判断できない場合は、建築士、工事業者、不動産会社、弁護士などの専門家を交えて整理する必要があります。
契約不適合責任免責なら、建物を確認しなくてもよい?
答えは「いいえ」です。
免責特約を設ける物件ほど、契約前の確認が重要です。
なぜなら、買主が建物の状態を知らないまま契約すると、引渡し後に、
「ここまでひどいとは聞いていなかった」
という感情が生まれるからです。
法的に免責されるかどうかとは別に、説明不足が原因で売主と買主の信頼関係が壊れることもあります。
特に再建築不可物件では、建物を解体すると建替えできないことがあります。
そのため、
「直して使うのか」
「倉庫として使うのか」
「解体するのか」
「将来的に建替えられるのか」
という買主の購入目的まで確認することが重要です。
売主が契約前に行うべき対策
老朽化建物を売却する売主は、次の資料を整理しておきましょう。
- 過去の雨漏りの有無
- シロアリ被害や防蟻工事の履歴
- 給排水管の漏水・詰まりの履歴
- 建物の傾き、床の沈み、腐朽
- 増改築やリフォームの履歴
- 火災、事故、浸水などの履歴
- 建築確認・検査済証の有無
- 再建築の可否
- 越境や私道利用の状況
- 修理業者の見積書や請求書
- 不具合部分の写真・動画
分からないことを無理に「ありません」と答える必要はありません。
確認できないのであれば、
長期間空き家のため、現在の作動状況は確認していません
と正直に記載する方が安全です。
買主が契約前に行うべき対策
買主側も、「安かったから」という理由だけで契約を急いではいけません。
特に再建築不可物件や老朽化した空き家では、購入価格より修理費の方が高くなることがあります。
契約前に、次の点を確認しましょう。
- 雨の日や雨上がりにも現地を見る
- 天井・壁の雨染みを確認する
- 床の沈みや建物の傾きを確認する
- 水道、排水、電気、ガスの状況を確認する
- 床下や屋根裏を可能な範囲で確認する
- リフォーム業者と一緒に現地を見る
- 再建築できるか役所で確認する
- 私道の通行・掘削承諾を確認する
- 修理費を含めた総予算を計算する
- 契約不適合責任の範囲と期間を確認する
必要に応じて、建物状況調査、いわゆるホームインスペクションを利用する方法もあります。
ただし、通常の建物状況調査は目視や非破壊検査が中心です。壁の中、床下の奥、地中配管など、すべての不具合を発見できるわけではありません。
国土交通省が案内する既存住宅売買瑕疵保険は、建物検査と保証を組み合わせた制度です。利用できる物件では、売主・買主双方の安心材料になります。
老朽化建物の契約書に必要な考え方
老朽化建物の契約書では、「契約不適合責任免責」と一行書くだけでは不十分です。
物件に応じて、少なくとも次の点を具体的に定める必要があります。
- 建物を使用する前提か、解体する前提か
- 現在確認できている不具合
- 動作確認していない設備
- 売主が責任を負う項目
- 売主が責任を負わない項目
- 責任を負う期間
- 修理費用の上限
- 買主が建物状態を確認したこと
- 再建築不可や私道など土地側の問題
- 引渡しまでに売主が行う作業
例えば、単に「雨漏りあり」と書くだけでなく、
1階和室北側天井に雨染みがあり、現在も雨漏りしている可能性があります。原因および被害範囲は調査していません。買主は自己の責任と費用で調査・修理するものとします。
というように、場所、確認状況、調査の有無、費用負担まで明確にした方がトラブルを防ぎやすくなります。
「古家だから免責」で終わらせないことが大切
私はこれまで、全国各地で雨漏りした空き家、床が抜けた建物、傾いた家、再建築不可物件などを見てきました。
現地で売主様から、
「もう何年も中に入っていないので、今どうなっているか分かりません」
と言われることもあります。
これは決して珍しい話ではありません。
相続した不動産であれば、売主様自身が一度も住んだことがなく、建物について何も知らないこともあります。
問題なのは、「知らないこと」そのものではありません。
分からないのに「問題ありません」と説明したり、知っている不具合を「言わなくても大丈夫だろう」と隠したりすることです。
不動産売買では、売主だけが得をする契約でも、買主だけが得をする契約でも、長くは続きません。
売主は知っていることを正直に伝える。
買主はリスクを理解したうえで価格を判断する。
不動産会社は、双方の認識が一致するように契約書へ落とし込む。
この三つが揃って、初めて安心できる売買になります。
老朽化した空き家や再建築不可物件でも、状態とリスクを正しく伝え、購入目的に合う買主を探せば、売却できる可能性はあります。
ただ免責にするのではなく、「何を説明し、何について免責にするのか」を明確にすることが、売主と買主の双方を守る一番の対策です。
※本記事は一般的な情報を整理したものです。契約不適合責任の判断は、売主・買主の属性、契約条項、告知内容、不具合の状態などによって異なります。具体的な契約や紛争については、宅地建物取引士や弁護士などの専門家へご相談ください。
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