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「空き家は解体すれば売れる」は危険?田舎の古家を壊してから土地が売れない本当の理由

 みなさん、おはようございます。
再建築不可物件コンサルタントの田中です。

 今回は、田舎の古家を壊しても売れない本当の理由について。

「古い家があるから売れないんですよ。解体して更地にした方が売りやすいですよ」

不動産会社からそう言われたら、

「なるほど。建物さえ壊せば売れるんだ」

と思ってしまう方も多いと思います。

ところが、全国の「売れない不動産」のご相談を受けていると、私はむしろ逆のケースを目にすることがあります。

古家を解体したのに土地が売れない。

しかも、解体する前より困ってしまった――。

先日、まさにそんなご相談がありました。
 

約800㎡の土地。空き家を壊したのに売れない…

ご相談いただいたのは、茨城県内にある約800㎡の土地でした。

もともとは空き家が建っていましたが、維持管理が難しく、近隣からの苦情もあったそうです。

市役所にも対応策を相談されたものの、具体的な解決には至らず、不動産会社にも相談。

最終的には建物を解体されました。

売主様としては、

「古い建物がなくなれば売りやすくなるだろう」

「不動産会社から提示された金額より安くすれば、すぐに買い手が見つかるだろう」

と考えていたそうです。

ところが――。

売れない。

さらに建物を壊したことで、今度は近所から雑草について苦情が来るようになってしまったそうです。

解体費も多額にかかっています。

そして売主様が次に心配されているのが、固定資産税などの負担です。

まさに、

「空き家問題を解決しようとして解体したら、今度は更地問題になってしまった」

という状態です。

全国の売れない不動産を見ていると、これは決して珍しい話ではありません。
 

なぜ「古家を壊せば土地は売れる」とは限らないのか?

都市部では、古い建物を解体して更地にすることで売却しやすくなるケースがあります。

しかし、地方の不動産は同じようにはいきません。

なぜなら、買主が見ているのは、

「古家があるか、ないか」だけではないからです。

そもそも、その地域に土地を欲しい人がどれだけいるのか。

その土地に住宅を建てたい人がいるのか。

800㎡もの広い土地を必要としている人がいるのか。

土地を買った後、管理していけるのか。

こうした「需要」そのものが少なければ、建物を解体しても土地の市場性は大きく変わりません。

ここは非常に重要です。

不動産は、

きれいにすれば売れる商品ではありません。

買ってくれる人がいて、初めて売れる商品なのです。
 

田舎では「土地が広い」ことがメリットとは限らない

一般的には、

「土地は広い方が価値がある」

と思われがちです。

ところが地方不動産では、必ずしもそうではありません。

たとえば800㎡、約240坪の土地。

住宅を建てるだけなら、そこまでの広さを必要としないケースも多い。

すると買主からすれば、

「こんなに広くなくてもいいんだけど…」

となります。

しかも広ければ、

草刈りの範囲も広い。

庭木があれば剪定費用もかかる。

フェンスなどの維持管理も必要になる。

固定資産税なども継続してかかります。

つまり、

「広い=高く売れる」ではなく、「広すぎる=買える人・欲しい人が減る」

ということが地方では起こります。
 

建物を壊した後にもお金はかかる

さらに問題なのが維持管理です。

古家を解体すれば、

「これで管理から解放される」

と思ってしまいます。

ところが実際には土地が残っています。

春から夏になれば草は伸びます。

800㎡もあれば、除草もなかなか大変です。

自分で草刈りをするにも時間と労力が必要ですし、遠方に住んでいれば現地まで行かなければなりません。

業者に依頼すれば当然費用がかかります。

そして草刈りをしても――、

また生えてきます。

雑草の生命力だけは、不動産市況とは関係なく絶好調です。(苦笑)

だからこそ、

「建物を解体する費用」

だけを見るのではなく、

「解体した後、その土地を売却できるまで何年間管理する可能性があるのか」

まで考えなければなりません。
 

空き家を解体すると固定資産税が上がることも

税金についても注意が必要です。

住宅が建っている土地については、一定の要件を満たすと固定資産税の「住宅用地の特例」が適用されています。

その建物を解体して住宅用地ではなくなると、原則として翌年度以降、その特例が受けられなくなる可能性があります。

そのため、

「古家を壊したら土地の固定資産税が上がった」

ということがあります。

ただし、実際の税額は土地の評価額や自治体での課税状況、解体時期などによって異なります。

だから私は、売却前の解体を検討する場合、

解体費+解体後の税負担+維持管理費+売却可能性

をセットで考えるべきだと思っています。
 

私なら「解体する前に売れる方法」を考えます

もちろん、倒壊の危険がある建物や周囲に危害を及ぼす可能性がある空き家など、早急に対応しなければならないケースもあります。

だから「古家は絶対に解体してはいけない」という話ではありません。

ただ、売却を目的としているのであれば、

私は解体する前に一度立ち止まります。

古家付きのまま売却できないか。

土地として買ってくれる人はいないか。

隣接所有者に需要はないか。

投資家や事業者に別の利用方法はないか。

土地を分割できないか。

農地、山林、私道、調整区域などが絡んでいないか。

再建築不可ではないか。

そもそも本当に建物が売れない原因なのか。

こうしたことを調べます。

建物を壊すのは、その後でもできます。

しかし、

一度壊した建物は元には戻せません。

だからこそ解体は「売却戦略を考えた後」に判断することが大切なのです。
 

空き家は「何年も放置してから売る」のではなく、早めに動く

そして、もう一つお伝えしたいことがあります。

全国の空き家、相続不動産、いらない土地などの処分・売却相談を受けていて強く感じるのは、

不動産は問題が大きくなる前の方が選択肢が多い

ということです。

たとえば、ご実家。

親御さんが住んでいる時点で、

「将来この家をどうする?」

と家族で話し合っておく。

そして空き家になったら、なるべく早い段階で売却、買取、賃貸、利用などの方向性を決める。

これが理想です。

ところが実際には、

「思い出のある実家だから、もう少しそのままにしておこう」

「荷物の整理が大変だから来年考えよう」

「固定資産税もそれほど高くないから、とりあえず置いておこう」

となりがちです。

その気持ちは、とてもよく分かります。

ご両親が一生懸命働いて購入した実家なら、なおさら簡単には決断できません。

ただ、その「もう少し」が5年、10年になることがあります。

その間に建物は傷みます。

庭木は成長します。

相続人が増えることもあります。

近隣から苦情が来る可能性もあります。

そして最終的に、

「建物がボロボロだから解体しましょう」

という話になってしまう。

これは非常にもったいない。
 

人が住める家には「建物としての可能性」が残っている

まだ人が住んでいる家なら、水道、電気、設備なども使用されている可能性があります。

空き家になった直後なら、多少の修繕で利用できることもあります。

DIYをしたい人。

安い中古住宅を探している人。

セカンドハウスを探している人。

投資物件として考える人。

地方移住を考えている人。

そういう方にとっては、古くても「建物があること」に価値を感じる場合があります。

ところが何年間も空き家にして雨漏りが発生し、床が抜け、設備が壊れ、庭がジャングル状態になってしまえば、その可能性はどんどん小さくなります。

だから私は、

「いつ売るか」も不動産売却では非常に重要

だと考えています。
 

再建築不可・調整区域・農地などは特に解体前の確認が必要

さらに注意したいのが、特殊な不動産です。

たとえば再建築不可物件。

今ある建物を解体してしまったら、新しい建物を建築できない場合があります。

市街化調整区域の分家住宅なども、誰でも自由に建築・利用できるとは限りません。

農地が絡む土地なら農地法上の制限があります。

私道しか接していない土地なら、通行・掘削などの権利関係を調査する必要があります。

山林や傾斜地、土砂災害警戒区域なども同様です。

こうした不動産を、

「古いから、とりあえず壊しましょう」

と先に解体してしまうのは危険です。

建物を壊す前に、

「この土地は、建物をなくした後に何ができる土地なのか?」

を必ず確認してください。
 

「売れない原因」を間違えないこと

今回のご相談を拝見して、改めて感じたことがあります。

不動産が売れない時、

「古家があるから売れない」

「草が生えているから売れない」

「見た目が悪いから売れない」

と考えがちです。

でも本当の原因は別のところにあるかもしれません。

人口が減少している。

買主が少ない。

土地が広すぎる。

価格が市場と合っていない。

再建築不可である。

調整区域である。

接道に問題がある。

インフラ整備に費用がかかる。

利用方法が限定されている。

つまり大切なのは、

「何をすればきれいになるか」ではなく、「誰ならこの不動産を必要としてくれるのか」

を考えることです。

これは私が全国の売れない不動産と向き合ってきて、非常に大切だと感じていることです。
 

売れない不動産でも、まずは「壊さず相談」してください

私は、「売れない不動産はない」と考えています。

もちろん、簡単に売れるという意味ではありません。

1円でなければ動かない不動産もあります。

隣地所有者との調整が必要な私道もあります。

持分売却を検討するケースもあります。

農地や山林、再建築不可、調整区域、分家住宅など、処分方法を考えるだけで何ヶ月もかかる物件もあります。

それでも、

その不動産を必要としてくれる人は誰なのか。

そこを徹底的に考える。

「相場のないところに相場をつくる」とは、そういうことだと思っています。

だから、古い実家や空き家をお持ちの方にお願いがあります。

解体業者へ電話する前に、不動産会社へ、

「この建物、壊さないまま売る方法はありませんか?」

と聞いてみてください。

特に田舎の広い土地、再建築不可物件、山林、農地、私道、調整区域などの「いらない不動産」は、解体してからではなく、解体する前の売却戦略がとても重要です。

空き家になって10年後に考えるのではなく、できれば住んでいるうちから家族で将来について話し合う。

そして空き家になったら、なるべく早く動き出す。

それだけでも、将来の選択肢は大きく変わると思います。

不動産には、それぞれ事情があります。

そして売主様にも、それぞれの想いがあります。

だからこそ私たちは、「売れない」と決めつけるのではなく、その不動産の次の担い手を探し続けたい。

空き家は、壊して終わりではありません。
大切なのは、その不動産を次の誰かにつなぐことです。