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日本と韓国の不動産事情、3つの大きな違いと今の市況


 みなさん、こんにちは。



再建築不可物件コンサルタントの田中です。





 今回は、日本と韓国の不動産事情について。



日本と韓国の不動産の違い



※写真:ソウルの街並み



 不動産業界に携わる身として、先日訪れた韓国で現地の不動産事情に触れる機会がありました。日本と地理的にも文化的にも近い国でありながら、不動産の仕組みや市場の動きには驚くほどの違いがあると感じました。





今回は、不動産の視点から見た「日本と韓国の大きな違い」を3つにまとめ、今の両国の不動産市況にも触れたいと思います。









① 所有権 vs 賃借権(チョンセ制度)



まず最も大きな違いは、居住の仕組みそのものです。







日本:



日本では、賃貸住宅の場合は「月額家賃+敷金・礼金」が一般的で、購入すれば当然「完全所有権」が得られます。







韓国:



韓国には独特の「チョンセ(全税)制度」があります。これは、入居時に数千万円~数億ウォン(数千万円)を一括で預け、家賃を払わずに住むというものです。契約満了後に全額返還される仕組みですが、家主はこの預かり金を運用することで利回りを得ます。





この制度は金利の高い時代には有効でしたが、近年の低金利化・家主側の資金不足により、チョンセ制度は急速に減少しています。結果、家賃中心の「ウォルセ(月払い制度)」へ移行が進んでいます。





② 住宅価格の変動と政府の規制



日本:



日本の住宅価格は、地域差はあるものの比較的安定傾向にあります。特に地方では人口減少の影響もあり、空き家問題も深刻化。一方、都市部では再開発やインバウンド需要による上昇も見られます。







韓国:



韓国の住宅価格は、ソウル首都圏を中心に大きく乱高下しており、政治・政策の影響を強く受けます。近年の急激な高騰と、その後の金利上昇による急落で、市場は大きく揺れています。





政府も投機抑制のために、購入制限、融資制限、税制強化など多くの政策を打ち出しており、特に若年層や新婚世帯には「持ち家への道」が遠のいている現実も。



 



③ 不動産取引の情報公開と仲介制度



日本:



日本では、不動産業者による仲介が一般的で、「レインズ(REINS)」という全国物件情報ネットワークを活用し、比較的透明性の高い市場を形成しています。





また、宅地建物取引士の説明責任も法律で義務づけられており、契約に際しては詳細な重要事項説明が必要です。







韓国:



韓国では、不動産情報が個別仲介業者に偏在しており、業者間で物件情報を独占するケースも少なくありません。そのため、「情報の非対称性」が強く、価格交渉力のある人が有利になりやすいのが特徴です。









両国の今の不動産市況は?



2025年現在、両国ともに不動産市場には共通のキーワードがあります。それは、





「金利上昇」→「取引減少」→「価格調整」





です。





日本では、日銀の金融政策が緩やかに正常化する中、住宅ローン金利も上昇傾向にあり、投資用不動産の利回りや賃貸需要の見直しが進んでいます。一方、韓国では既に急激な金利上昇により、取引件数が激減。住宅価格の下落も進行中で、「持ち家はリスク」と考える若者も増えているのが現状です。







隣国でありながら、これほどまでに「不動産」という生活の土台が違うことに驚かされます。ただ共通して言えるのは、金利や経済環境の変化に不動産市場は敏感に反応するということ。







私たち日本の不動産会社にできるのは、こうした海外の事例も学びながら、より持続可能で安心できる住環境の提供を目指すことだと、改めて感じました。(^^)